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【解析】丹羽孝希がテニス賭博で略式起訴──同じ「オンラインカジノ」でも不起訴の警察官がいたのはなぜか?刑法185条の思考停止に迫る

2025年2月、卓球元日本代表の丹羽孝希選手(30)が、「海外オンラインカジノでの賭博行為」により単純賭博罪(刑法185条)で略式起訴され、千葉簡裁から罰金10万円の略式命令を受けました。

一方で、過去には「オンラインポーカー(海外サイト)」をプレイしていた警察官が不起訴処分となった事案も存在します。

この処分の差は何に起因するのか?
「オンラインカジノ」と呼ばれているものの中身は本当に“カジノ”なのか?
そして、こうした事案に共通する法的構造──必要的共犯論と賭博の定義について、以下で詳しく検討していきます。

海外のオンラインカジノサイトで賭けをしたとして、千葉区検は21日までに賭博罪で、2021年東京五輪の卓球男子団体で銅メダルを獲得するなどした丹羽孝希選手(30)を略式起訴した。20日付。丹羽選手は同日、千葉簡裁から罰金10万円の略式命令を受けて納付した。

起訴状によると、2023年6月11日、オンラインカジノサイト「ステーク」に東京都内から接続し、暗号資産(仮想通貨)を元手にテニスの勝敗を予想する賭博をしたとされる。

出典:産経新聞ウェブ魚拓

略式起訴とは?──“裁判なし”でも有罪となる制度

「略式起訴」とは、刑事裁判を経ることなく、検察官が罰金や科料での処分を求め、簡易裁判所が書面審査のみで処分を下す手続きです。主に軽微な犯罪に適用され、手続きの迅速化を目的としています。

丹羽選手のケースでは、検察官が正式起訴を選ばず、略式手続を提案し、本人がこれに同意。結果として罰金10万円の命令が即日出され、同日中に納付されました。

しかし、注意すべきはこの手続きが「有罪判決」そのものであるという点です。略式命令でも正式な刑罰が科されるため、刑事記録上は「前科」が付きます。

略式起訴の主な特徴 内容
裁判の有無 なし(公判手続は行わず、書面審査のみ)
被疑者の同意 必須(同意がない場合は略式起訴はできない)
結果 有罪確定・罰金や科料(懲役や執行猶予は不可)
法的効果 前科がつく。有罪判決と同等の扱い
メリット 手続の簡略化、迅速な終結
デメリット 弁解の機会がほぼなく、争点があっても覆しにくい

不起訴処分とは?──刑罰も前科もつかない「事実上の免責」

これに対して、過去に不起訴処分となった警察官の事例(オンラインポーカー)は、そもそも検察官が「刑事訴追に値しない」と判断したものです。

不起訴には主に以下のパターンがあります。

  • 嫌疑不十分:証拠が不十分で起訴できない
  • 起訴猶予:罪は認定できるが、事情により訴追しない
  • 罪とならず/構成要件該当せず:そもそも犯罪が成立しないと判断

この場合、裁判も罰金もなく、「前科」も付きません。もっとも、「前歴」(捜査対象となった記録)は残るため、完全な無関係ではありませんが、処分としては極めて軽い部類に属します。

なぜ処分が分かれたのか──ポーカーとテニス賭博の違い

1. 賭博の対象と偶然性

丹羽選手の事案は、暗号資産を元手に「テニスの試合結果」に賭けたものです。これは一見すると「偶然の勝敗に財物を賭ける」行為に見えますが、テニスは競馬や競艇と同様、スキルや戦略、選手の能力により結果が左右されるスポーツです。

したがって、単なる偶然性ではなく、一定の予測可能性や技術的要素が含まれるため、賭博罪の「偶然性支配」の要件との関係で問題が生じ得ます。

一方の警察官は、ポーカーをプレイしていたとの報道。ポーカーはプレイヤー間で勝敗が決まり、運に加えスキルの要素が強いため、「偶然性の支配下にあるか否か」が争点となり得ます。

裁判例でも、麻雀やポーカーのような対人型ゲームは「単なる運任せの偶然性とは異なる」として、賭博罪の成立を慎重に判断する傾向があります(例:昭和26年4月13日東京高判)。

2. 主観的事情(社会的地位・反省状況)

丹羽選手は社会的影響が大きい立場にあり、所属チームからも契約解除、Tリーグから登録抹消を受けるなど、処分が社会的制裁と連動しています。

一方で警察官の事案は、内部処分と組み合わせて「社会的制裁は十分」と判断された可能性があります。

3. 実行地と管轄の問題

どちらも「海外サイト」で賭博を行ったとされますが、重要なのはどこから接続したかです。国内からインターネット経由で接続していれば、日本の刑法が適用される余地があります。

必要的共犯論と「プレイヤーのみ処罰」の矛盾

ここで問題となるのが、「なぜプレイヤーだけが処罰され、運営者や他の関係者は処罰されないのか?」という疑問です。これはいわゆる必要的共犯論に関わる議論です。

賭博は通常、プレイヤーと胴元が揃って初めて成立する犯罪です。刑法学では、両者が必要的共犯関係にあるとされ、片方(プレイヤー)だけを処罰することは原則的には不公平・不完全です。

ところが、海外のオンラインカジノサイトは日本の捜査機関の手が届かない場所に存在しており、胴元を検挙することが現実的に不可能です。このため、警察はプレイヤーのみを摘発し、形式的に「犯罪構成要件は充足されている」として処理してしまうのです。

これは本来の共犯論の建前からは大きく逸脱しています。

法的制度の限界と運用の矛盾

こうした事案から見えてくるのは、次のような制度的矛盾です。

  • 捜査の及ぶ範囲でしか賭博罪は適用されていない
  • 「起訴できるかどうか」により、不起訴・略式・正式起訴が揺れる
  • 事実上、プレイヤーだけがバラバラに処罰されている

このような法運用が続けば、「処罰されるかどうかは運次第」「立件されるかは社会的立場次第」といった印象を国民に与え、刑罰の予測可能性と均衡性を著しく損なうことになります。

終わりに──「賭博罪」の再設計は不可避ではないか?

今回の丹羽選手の略式起訴は、現行の賭博罪の運用の限界を浮き彫りにしています。オンラインカジノというグレーゾーンの実態、必要的共犯の理論的破綻、プレイヤー処罰の不均衡──これらはもはや一選手の倫理問題ではなく、立法政策の問題です。

今後は、現行法の枠組みのままプレイヤーだけを処罰するのではなく、胴元を含む包括的な処罰体制の整備や、賭博における「偶然性」や「射幸性」の定義の見直し、さらには暗号資産を介した新たな賭博形態への法的対応といった、より本質的な制度設計の見直しが必要だといえるでしょう。

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