え、違法なのに起訴されない!?オンラインカジノで「不起訴」を勝ち取った弁護士とは?

オンラインカジノって、やっぱり違法なの?
最近、「オンラインカジノって違法なんでしょ?」「でも捕まらないって聞いたけど…」なんて声をよく聞きます。
結論から言うと、日本の法律ではオンラインカジノの利用は「原則として違法」です。刑法185条では賭博行為を禁止しており、国内から海外のカジノサイトにアクセスしてお金を賭けるだけでも、理屈の上では「単純賭博罪」にあたります。
でもここで「えっ?」と思いませんか?
違法なら、なんで利用してる人がそこら中にいるの?
本当に違法なら、みんなもっと捕まってるはずじゃ?
その疑問、実はあながち間違っていません。
実際に「不起訴」を勝ち取った弁護士がいる
実は、オンラインカジノを使ったことで逮捕されたにもかかわらず、正式な裁判を通じて「不起訴」になった人がいます。
この事件を担当したのが、**津田岳宏弁護士(コールグリーン法律事務所)**です。彼は、自身のブログでこの出来事を詳しく書いています。曰く:
「本日時点において、オンラインカジノプレイヤーが対象となった賭博罪被疑事件で争った案件は国内でただひとつであり、そのひとつは、不起訴となった。」
つまり、日本で唯一、オンラインカジノ利用者が逮捕されて、裁判で戦って、不起訴=処罰されなかったという例が現実にあるんです。
この「不起訴」という言葉、あまりなじみがないかもしれませんが、簡単に言えば「検察が起訴(=裁判にかけること)をしない」と決める処分のこと。
言い換えると、「法律的にはグレーだけど、今回は見逃すわ」という判断です。
じゃあ、オンラインカジノってやっても大丈夫なの?
ここで勘違いしちゃいけないのは、「不起訴=合法」ではないということ。**オンラインカジノの利用は依然として「違法」**とされています。ただ、「違法だけど起訴されなかった」というのが事実です。
じゃあ、どうして起訴されなかったのか?
津田弁護士の主張によると、オンラインカジノの「胴元(運営側)」が海外にいて、日本の法律で裁けないのに、利用者だけを処罰するのはおかしい、という理屈があるそうです。たしかにそれ、筋が通ってる気もしますよね。
なぜメディアは報じない? 法律と現実のギャップ
こういう話、普通ならニュースになってもおかしくないはず。でも、テレビや新聞で見たことありますか? おそらく、ほとんどないはずです。
なぜでしょうか?
ひとつは、「不起訴」はニュースになりにくいというメディアの性質。もうひとつは、この問題が日本の法律の限界を露呈してしまうからかもしれません。
つまり、法律では違法とされているのに、実際には処罰されない。しかもそれが、ちゃんとした裁判の中で認められている。これはもう、「グレーゾーン」では済まされない問題です。
このままじゃ利用者は増えるだけ。法制度の見直しを!
現実として、オンラインカジノの利用者は増え続けています。それもそのはずです。
- 「違法だけど捕まらない」
- 「捕まっても不起訴になる可能性がある」
- 「弁護士がブログで勝利宣言してる」
こんな情報が出回っていたら、リスクを軽視する人が出てくるのも当然でしょう。
これはもう、個人のモラルや自己責任の問題ではありません。日本の法制度そのものが時代に追いついていないという話です。
たとえば、
- オンラインカジノに関する特別法の制定
- 胴元への国際的対応策の強化
- 賭博罪の構成要件の見直し
こういった制度改革がなされなければ、「違法だけど不起訴」というグレーな世界が広がるばかりです。
結論:知らないでは済まされない時代に
オンラインカジノは、確かに法律上は違法。でも、それを裁く制度や実務には、大きな穴が空いている――。
そして、その現実は、すでに法廷の中で明らかになっているのです。
私たちは「知らなかった」「なんとなくセーフだと思った」では済まされない時代に生きています。この問題を真正面から議論し、法のあり方そのものを見直す時期が来ているのではないでしょうか。
賭博罪を専門とする弁護士として,新年早々非常に嬉しい結果を出すことができた。
私は昨年から,いわゆるオンライカジノをプレイしたとして賭博罪の容疑を受けた人の弁護を担当していたのであるが,これにつき,不起訴を勝ち取ったのである。
昨年,オンラインカジノをプレイしていたユーザー複数が賭博罪の容疑をかけられた。
彼らのほとんどは,略式起訴されることに応じて(これに応じるかどうかは各人の自由である)軽い罰金刑になることに甘んじたのであるが,そのうち1人は,刑を受けることをよしとせず,略式起訴の打診に応じず争いたいとの意向を示した。弁護を担当したのは私であった。
本件は,海外において合法的なライセンスを取得しているオンラインカジノにつき,日本国内のパソコンからアクセスしたという事案である。
この形態の案件は,従前検挙された例がなく,違法なのかどうかがはっきりしない状況になっていた。
賭博をやったのは認めるが,そのような状況で不意に検挙されたのが納得いかない,というのがその人の言い分であった。
賭博罪の不当性を強く感じている私としても,本件は是が非でも勝ちたい事件であった。
本件のポイントは,いわゆる必要的共犯の論点で語られることが多かったが,私はそれは違うと考えていた。
これのポイントは,被疑者が営利目的のない単なるユーザーであり,罪名も単純賭博罪であるという点である。
賭博罪とひと口にいうが,単純賭博罪と賭博場開張図利罪の軽重は雲泥の差である。
後者の量刑は3月以上5年以下の量刑であるが,前者の量刑は50万円以下の罰金である。
諸外国では,賭博場開張図利罪や職業賭博は処罰するが単なる賭博は処罰しないという法体系を取っている国も多い。
ドイツ刑法や中国刑法がそうだ。
現行刑法でも,単純賭博罪は,非常な微罪である。
法定刑は罰金のみ,罰金刑の法律上の扱いは軽く,たとえばわれわれ弁護士は,執行猶予が付いても懲役刑なら資格を失うが,罰金刑なら失わない。
またこのブログで散々書いているように,今の日本は,競馬やパチンコなど,容易に合法的な賭博行為ができる環境が整っている。
つい先日には,カジノ法案も可決された。
そのような状況で,この微罪を適用して刑に処することが刑事政策的に妥当であるとは到底思えない。
単純賭博罪は撤廃すべきというのが私の主張であるし,少なくとも,この罪は今すぐにでも有名無実化させてしかるべきである。
本件の特徴は,当該賭博行為につき,海外で合法的なライセンスを得ている一方当事者である胴元を処罰することはできないところ,他方当事者であるユーザーを処罰しようとする点にある。
この点は従前,必要的共犯において一方当事者が不可罰である場合に他方当事者を処罰することができるのか,という論点に絡めて語られることが多かった。
しかし,真の問題点はここではないと私は考えていた。
賭博場開張図利罪と単純賭博罪の軽重は雲泥の差である。
賭博行為について,刑事責任のメインは開張者(胴元)が負うのであり,賭博者(客)が負う責任はある意味で付随的である。
賭博犯の捜査は胴元の検挙を目的におこなうものであり,「賭博事犯の捜査実務」にもその旨記載がある。
そこには,些細な賭け麻雀を安易に検挙すべきでない旨の記載もある。胴元のいない賭博を安直に検挙することをいさめる趣旨である。
以上を踏まえたとき,本件は,主たる地位にある一方当事者を処罰することができないにもかかわらず,これに従属する地位にある当事者を処罰することができるのか,という点が真の論点となる。
この点,大コンメンタール刑法には,正犯者が不可罰であるときに従属的な地位にある教唆者や幇助者を処罰することは実質的にみて妥当性を欠くので違法性を阻却させるべき,との記載がある。
賭博事犯において,胴元と客は教唆や幇助の関係にあるわけでないが,その刑事責任の軽重にかんがみれば,事実上従属する関係にあるといえる。
というような話は,私が検察庁に提出した意見書の一部である。
本件での主張事由は他にも色々とあり,それらを全て書くと長すぎるし,そもそも,ラーメン屋が秘伝のスープのレシピを完全公開するような真似はしない(半分冗談半分本気)。
結果が出たのは,間違いのない事実である。
本日時点において,オンラインカジノプレイヤーが対象となった賭博罪被疑事件で争った案件は国内でただひとつであり,そのひとつは,不起訴となった。
言うまでもなく,不起訴は不処罰であり,何らの前科はつかない。平たく言うと「おとがめなし」ということだ。
営利の目的なく個人の楽しみとしてする行為を対象とする単純賭博罪の不当性をうったえ続けている弁護士として,この結果を嬉しく思う。
【追記】
上記ブログは2017年1月6日に書いたものです。
不起訴になるかどうかは諸般の事情が総合的に考慮されて判断されるものであり、個別の事件ごとに異なります。また風紀に対する罪である賭博罪に関した具体的運用は時代によって変化していきます。2022年10月より警察庁は海外で合法的に運営されているオンラインカジノに日本国内から接続して利用する賭博は犯罪である旨をホームページで大々的に告知しており、その後オンラインカジノの利用、決済代行、宣伝行為などで逮捕され処罰された者が複数います。現在においては海外で合法的なライセンスを取得しているオンラインカジノであっても日本国内から日本人がアクセスして賭博をすると賭博罪で処罰されるのでこの点周知徹底すべきといえます。
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