【法律解説】登録ボーナスでお試ししても捕まる?現金ゼロでも違法!?賭博罪の“既遂ライン”を見極めろ!

「オンラインカジノは違法?」という素朴な疑問
オンラインカジノに関する法的問題は、実は非常に複雑です。「ネット上で遊んでいるだけならセーフでしょ?」という感覚とは裏腹に、クリック一つで“賭博罪の既遂”になる可能性も指摘されています。
そのうえ、現金を賭けていない“登録ボーナス”だけのプレイでも違法なのかという点になると、さらに判断が分かれるグレーゾーン。この記事では、その“既遂ライン”を、判例・条文・事例から丁寧に読み解いていきます。
BETのクリックが「既遂」?―実行行為の境界線
最も合理的な判断は、実際にBET(賭け)を行った瞬間=既遂とする解釈です。このクリック一回が、刑法上の「実行行為」に該当する可能性があるとされます。
ただし、ここで重要なのは、賭博の相手(胴元)がどこにいるか、どんな形で運営しているかという点です。
胴元との共犯性と海外拠点の問題
オンラインカジノの多くは、海外で合法的に営業しています。このような場合、単純に日本の賭博罪を適用して「共犯」と断じるのは簡単ではありません。
刑法上は共犯処罰が前提ですが、相手が日本国外にいる場合、処罰の実効性が乏しく、共犯の成立に疑義があるとされています。つまり、法律構成としては違法でも、実務上は不起訴処分にとどまるケースが多いのが現状です。
登録ボーナスだけで既遂になるのか?
近年は、現金を使わず登録時のボーナスのみでBETできるカジノも増えてきました。この場合でも、「BETボタンのクリック=実行行為」とみなされるのでしょうか?
実際に自己資金を賭けていない=財産的リスクがないという点で、「賭博性」が希薄と考える余地もあります。
一方で、登録ボーナスも経済的価値を有する可能性があるため、法的に「賭けに供した財物」と解される可能性も否定できません。
このように、「現金ゼロでも違法なのか?」という点には、判例・実務上の整理が追いついていないグレーな領域が存在しています。
【実例解説】どこからが「違法」になるのか?
では、実際にどのようなケースが問題視されるのか、以下に興味深い具体例を紹介します。
事例①:代理BETで関与した場合の疑義
たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
Aがオンラインカジノにアクセスして実際にBETを行い、Bはそばで「赤に賭けろ」「ここは降りとけ」などと指示を出す。
勝った利益をAとBで折半した。
このような場合、Bは実際には操作していませんが、共謀共同正犯あるいは教唆犯として処罰される可能性があります。
ただし、ここで問題となるのは以下の点です:
- 事前に利益分配の合意があったか
- 関与の積極性・継続性があったか
- ゲームに参加している実態がどれほど認められるか
こうした要素の有無により、「賭博に加担したか否か」の評価が分かれるのです。
事例②:登録ボーナスのみでのBET
次に、「登録ボーナスだけでプレイした場合はどうなるのか?」という問題です。
例:カジノに登録したら20ドル分の無料チップが配布され、それだけでルーレットを回した。自己資金は未入金。
このようなケースでは、「自己資金ゼロなのだから違法ではないのでは?」と考えがちです。
しかし、登録ボーナス自体に“換金可能性”や“経済的価値”があると評価される場合、それを「財物」とみなし、賭博罪の構成要件を満たすとされる可能性があるのです。
とはいえ、処罰対象とするには実質的違法性が薄いとの判断がなされる場合もあり、捜査が開始されても最終的には不起訴となる事例が散見されます。
総括:グレーゾーンは広がっている
オンラインカジノに関する賭博罪の問題は、従来の「リアルな場の賭け」とはまったく異なる様相を呈しています。特に以下の点で、法的評価は不透明なままです。
- 物理的接触がない(=海外のサーバーを通じた参加)
- 現金以外の財物(ボーナスなど)の扱いが不明確
- 相手方が合法であれば共犯性に疑義がある
このように、構成要件・既遂時期・処罰可能性の判断を困難にする要素が多く含まれています。
したがって、「違法だと考えられる」=必ずしも処罰されるとは限らないという実務的な温度差が存在します。
【結論】法的リスクを冷静に見極めよう
現時点での実務運用を見る限り、「クリック1回で即逮捕」されるようなケースは稀です。しかし、だからといって無警戒にプレイして良いわけではありません。
法的にはグレーでも、倫理的・社会的にはブラックに近づいているという状況を認識し、冷静な判断が求められます。
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