不起訴は無罪?なぜ説明しない?──オンラインカジノに見る法のグレーゾーン

賭博容疑で書類送検
違法なオンラインカジノを利用したとして賭博容疑で書類送検されたオリックスの山岡泰輔投手(29)について、大阪地検は23日、不起訴処分にした。地検は「捜査の結果、諸事情を考慮した」としており、詳細を明らかにしていない。
山岡は春季キャンプ中の2023年2月、宮崎市内の宿泊施設でスマートフォンから海外のオンラインカジノサイトに接続し、ポーカーゲーム賭博をした疑いを持たれていた。今年2月に球団が大阪府警に相談。山岡は府警の調べに、21年9月~23年10月に約300万円を賭けたことを認めた。また、福岡区検はオンラインカジノを利用したとして単純賭博容疑で書類送検されたソフトバンクの関係者を10日付で不起訴処分にしている。
山岡泰輔投手の賭博疑惑が残した司法の“グレーゾーン”
プロ野球・オリックスの山岡泰輔投手が、海外のオンラインカジノを利用していたとして賭博容疑で書類送検された。疑いの内容は明確で、2021年から2023年にかけておよそ300万円を賭けていたことを本人も認めている。にもかかわらず、大阪地検は2024年5月23日、この件を不起訴処分とした。
検察はその理由を「諸事情を考慮した」として、詳細を一切明かしていない。
この決定は、ただのスポーツニュースの一項目として終わらせてはならない問題を孕んでいる。
■ 「書類送検」とは何か?──警察の“告発”、検察の“判断”
まず、整理しておくべきは「書類送検」という言葉の意味である。これは、警察が捜査を終え、「この人物は罪を犯した可能性がある」として検察に事件を送致する手続きだ。逮捕されずとも、捜査対象として警察が違法性を認定したという意味では、かなり重い段階にある。
つまり、「書類送検される=警察は犯罪と見なした」ということである。
では、その事件を不起訴にするとはどういうことか?
■ 不起訴の意味と、“無罪”という誤解
不起訴は「起訴しない」だけであり、決して「無罪」や「無実」を意味するものではない。実際、証拠が不十分だったり、本人が反省していたり、社会的制裁をすでに受けていると判断されれば、検察は起訴猶予処分として不起訴にすることがある。
しかし、こうした法的背景を熟知している人間は多くない。とくに有名人やプロスポーツ選手が不起訴になった場合、「ああ、違法じゃなかったんだな」「問題なかったんだ」と多くの人が誤解する構造ができあがっている。
これが極めて深刻だ。
■ 法律は“人を選んで”適用されるのか?
山岡投手のケースでは、違法なオンラインカジノに約2年間・数百万円を賭けたことが明確になっている。だが、不起訴という判断により、事実上「問題なし」の烙印が押されてしまった。
仮に一般市民が同じことをしていれば、どうだっただろうか?
実際、近年では一般のオンラインカジノ利用者が次々と逮捕・書類送検され、有罪判決を受けているケースもある。にもかかわらず、著名なスポーツ選手が“捜査の諸事情”という曖昧な理由で不起訴となることは、法の不平等な運用を強く印象づける結果となる。
■ 「グレーゾーン」は闇の温床となる
ここで問題となるのは、オンラインカジノ利用が本当に違法なのか、違法でないのかが曖昧なまま、運用だけが先行しているという点だ。
- 法律上、オンラインカジノそのものを規定した条文は存在しない
- 警察の判断によって逮捕される者と見逃される者が分かれる
- 検察は「諸事情を考慮」としか説明しない
このような曖昧な法運用は、法治国家においてあってはならない。
もしオンラインカジノの利用が違法ならば、それは誰が行っても処罰されなければならない。逆に違法でないという判断を検察が下すのであれば、その法的根拠と基準を公に説明すべきである。
■ 結語:不信感が生むものは、無法地帯である
大阪地検の「不起訴」という判断は、今回だけの問題ではない。
それは日本における賭博法制の不透明さ、検察の恣意的な運用、そして何より法の公平性の欠如を象徴する一例である。
このまま「不起訴=問題なし」「オンラインカジノ=グレー」のまま放置されれば、次に裁かれるのは誰か、あるいは見逃されるのは誰か、それは捜査機関の気分次第という事態になりかねない。
そして、その最大の犠牲者は、法を信じて生きようとする市民である。
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